スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このエントリーをはてなブックマークに追加

可微分構造 #とは

これはMath Advent Calender 2015の記事です。

前回の記事で滑らかな図形を「多様体」という言葉で表しましたが、正確には「可微分多様体」というべきでした。
図形の滑らかさを定めるのは「可微分構造」と呼ばれるものですが、なかなか難しい概念だと思います。
可微分構造とは、一言で言ってしまえば、図形の各点で座標を与えることです。

まず具体例を書きます。
きちんとした定義は最後に書きます。

$x$-$y$平面で方程式$y=x^3$により定まる曲線$M$を考えましょう。
この曲線は滑らかでしょうか。
直観的には滑らかと言っていいような気もします。

では可微分構造を与えてみましょう。
まず、1つ目の可微分構造は、写像$\varphi _1:M\rightarrow \mathbb{R}$を
\[\varphi _1(x,y)=x\]
で定め、これで与えることにします。
$M$の全ての点は$\varphi _1$により座標が振られました。

次に、2つ目の可微分構造は、写像$\varphi _2:M\rightarrow \mathbb{R}$を
\[\varphi _2(x,y)=y=x^3\]
で定め、これで与えることにします。
やはり、$M$の全ての点は$\varphi _2$により座標が振られました。

最後に、3つ目の可微分構造は、写像$\varphi _3:M\rightarrow \mathbb{R}$を
\[\varphi _3(x,y)=x+1\]
で定め、これで与えることにします。
もちろん、$M$の全ての点は$\varphi _3$により座標が振られます。

それで?という声が聞こえてきそうですね(笑)

さて可微分多様体とは図形と座標の組のことを言いますので、$(M,\varphi _1)$,$(M,\varphi _2)$,$(M,\varphi _3)$は全て違う可微分多様体ということになります。
そんな区別する必要あるの?という声が…(笑)

実際、$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _3)$はあまり区別する必要がなくて、同値な可微分多様体である、ということになります。
これはどういうことかと言うと、$\varphi _3\circ \varphi _1^{-1}:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}$-これは$x$に$x+1$を対応させる写像です-が微分同相(自分自身も逆写像も何回でも微分できる)になっているということです。
実際、$\varphi _3\circ \varphi _1^{-1}$が何回でも微分できるのは明らかだし、逆写像の$x\mapsto x-1$も何回でも微分できますからね◎

ところがどっこい、$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _2)$は上の意味で同値ではありません。
なぜなら、$\varphi _2\circ \varphi _1^{-1}$は$x\mapsto x^3$で与えられ、これ自身は何回でも微分できますが、逆写像の$x\mapsto \sqrt[3]{x}$は$x=0$で微分できず、微分同相になっていないためです(同相ではあるんですが)。

それでは$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _2)$は全然違う可微分多様体なのかというとそうではなくて、同値ではないのですが、「可微分多様体として微分同相」になっています(さっきまで出てきた微分同相は、ユークリッド空間の微分同相)。
どういうことかと言いますと、写像$f:M\rightarrow M$を
\[f(x,y)=(\sqrt[3]{x},\sqrt[3]{y})=(\sqrt[3]{x},x)\]
と定めます。
これを間に入れて$\varphi _2\circ f\circ \varphi _1^{-1}$という写像を考えるとこれは恒等写像$x\mapsto x$になっていて明らかに微分同相です。
つまり、$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _2)$も同じような多様体ということになり、結局$(M,\varphi _1)$,$(M,\varphi _2)$,$(M,\varphi _3)$は全て同じような可微分構造を持つということになりました(^o^)

では、同じ図形の上に微分同相でもないような可微分構造はあるんでしょうか?
それは高次元にはあって面白いのですが大人の事情で割愛します…
とりあえずの結論としては、可微分多様体が本質的に違うかどうかは、微分同相類で判断しましょう!ということですね◎

さて、終わりに、可微分多様体に関する定義を書いておきます。
流儀によって色々言葉や前提が違うかもしれませんが、ご容赦ください。

まずは、基礎となる位相空間に条件を要請します。

第二可算公理を満たすHausdorff空間$M$が$n$次元位相多様体であるとは、$M$の各点$p$が$\mathbb{R}^n$の開集合と同相な開近傍を持つことを言う。
$M$の開集合$U$と$U$から$\mathbb{R}^n$の中への同相写像の組$(U,\varphi)$を座標近傍という。

第二可算公理を満たすHausdorff空間、というのはおまじないで、残りの部分が大事です。
次元が定義できるような図形になっています。

次に、可微分構造を定義します。

$n$次元位相多様体$M$の座標近傍の族$S=\{(U_{\alpha },\varphi _{\alpha })\}_{\alpha \in A}$が$M=\cup _{\alpha \in A}U_{\alpha }$を満たし、任意の$\alpha ,\beta \in A$に対して$\varphi _{\beta }\circ \varphi _{\alpha }^{-1}$が微分同相であるとき、$S$を可微分座標近傍系と言う。
$n$次元位相多様体$M$と可微分座標近傍系$S$の組$(M,S)$を可微分多様体と言い、可微分座標近傍系$S$は位相多様体$M$に可微分構造を定めると言う。

要するに、座標で図形全体を覆って、座標変換が全て滑らかなものを可微分構造と言う、ということです。

次に、可微分多様体の同値を定義します。

可微分多様体$(M,S)$の座標近傍$(U',\varphi ' )$が可微分座標近傍であるとは、$S\cup \{(U',\varphi ' )\}$も位相多様体$M$の可微分座標近傍系となることを言う。
可微分多様体$(M,S)$の可微分座標近傍全ての和集合$\tilde{S}$を$(M,S)$の極大可微分座標近傍系と言う。
可微分多様体$(M,S)$,$(M,S')$に対し$\tilde{S}$=$\tilde{S'}$が成り立つとき、$(M,S)$と$(M,S')$は同値であると言う。

座標で図形を覆えば可微分構造になるんですが、座標による図形の覆い方は無数にあります(例えば余分なものをどんどん付け加えればよい)。
そこで、座標変換が滑らかなものを全部付け加えてこれ以上余分なものの付け加えようがないものを作るわけです。
極大可微分座標近傍系が、位相多様体$M$上の可微分構造の同値類の完全代表系としてとれます。
極大〇〇と聞くと、「Zornの補題が~」と言われないかビクビクしてしまうのを何とかしたいです(笑)

さて、最後に微分同相を定義します。

可微分多様体$(M,S)$,$(N,T)$の間の写像$f:M\rightarrow N$が微分同相写像であるとは、位相空間として同相写像であり、任意の$(U,\varphi )\in S$,$(V,\psi )\in T$に対し、$\psi \circ f \circ \varphi ^{-1}$が微分同相であることを言う。

同値ならば恒等写像が微分同相なので、可微分多様体の同値類の集合(これは基礎となる位相多様体が同じ可微分多様体どうしの同値関係)をさらに微分同相類(これは基礎となる位相多様体が異なる可微分多様体間にも入る同値関係)にわけることができて、これが本質的に異なる可微分構造の階層だ、と言っていいのではないかと思います◎
スポンサーサイト

このエントリーをはてなブックマークに追加

テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

プロフィール

ring

Author:ring
大学で微分幾何学、位相幾何学を学ぶ。
修士課程修了後、就職。
会社勤めの傍ら、数学イベントやサイエンスカフェなどで、数学のおもしろさを平易に伝える活動をしています。

twitter
最新記事
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
カテゴリ
最新コメント
カウンター
最新トラックバック
月別アーカイブ
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。