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Stokesの定理をやったら次はde Rhamの定理でしょ

これはMath Advent Calender 2015の記事です。

de Rhamの定理という、私の好きな幾何の定理についてとてもアバウトに書きます。
微積分のStokesの定理をやったら、ここまで勉強しないと絶対もったいないと思います。

志村五郎先生は著書[志]の中で
「de Rhamの理論(中略)は幾何学において基本的であって、その教育上の、あるいは学習上の、重要性はGauss-Bonnetの定理をはるかに上回る」
「Gauss-Bonnet(中略)の公式は忘れてもかまわないが、de Rhamの定理は忘れてはならないのである」
とおっしゃっています。

さてde Rhamの理論とは、図形の上の微分形式からその図形の穴のあき方がわかるというものです。
微分形式?穴のあき方?

具体的にざっくり説明しましょう。
$x$-$y$平面上の単位円$S^1$を考えます。
$x$軸の正の部分から反時計回りに角度を測って座標$\theta $がとれます。
きちんと書くと、単位円から$(1,0)$を除いた図形の上の関数$\theta :S^1\setminus \{(1,0)\}\rightarrow (0,2\pi )$が定まります。

図形の上の関数のことを「0次微分形式」と言います。
ただし、この$\theta $は$(1,0)$でうまくつながらず$S^1$全体で定義されていないので、残念ながら0次微分形式にはなっていません。

ところがこの関数を「微分」することはできて、1次微分形式$d\theta $というものができます。
これは$S^1$全体で定義されるのです。
この微分を外微分と呼びます。

ちなみに、一般に$k$次微分形式を外微分すると$(k+1)$次微分形式ができます。
そこで$d\theta $をもう1回外微分して2次微分形式を作ろうとするとこれは0になってしまいます。
なぜなら、外微分は2回連続してやると0になるという仕組みになっているからです($dd=0$)。

以上で$d\theta $の満たす性質がある程度わかりました。
〇1次微分形式$d\theta $は、0次微分形式の外微分として書くことはできない。
〇1次微分形式$d\theta $は、外微分すると0になる。
さらに、上の性質を満たす1次微分形式は本質的には$d\theta $しかないということもわかります。

これが、単位円$S^1$には1次元の穴が1つあいているということを示しているのです。
なぜか?

まず、穴のあいていない図形の上の1次微分形式は必ず0次微分形式の外微分として書けることを主張する、Poincaréの補題というものがあるからです。
これは簡単な微分方程式の問題でして、0次微分形式の外微分が与えられた1次微分形式になる($df=\omega $)という微分方程式の可積分条件が、与えられた1次微分形式の外微分が0になる($d\omega =0$)ということだということです。

ということは、外微分しても0になるにもかかわらず0次微分形式の外微分として表せない1次微分形式があるような図形には穴があいている、ということになります(対偶ですね◎)。
そして、そのような1次微分形式が本質的に1つだけということが、穴が1つあいているということに対応します。
なお、「1次元の穴」と書いたのは議論を0次微分形式と1次微分形式で行ったからです。
同様のことを$(k-1)$次微分形式と$k$次微分形式でやれば、$k$次元の穴の数がわかるということです。

$k$次微分形式の元のうち外微分して0になるもの全体を、$k$次微分形式の元のうち$(k-1)$次微分形式の外微分として表せるもの全体で割ってできる商ベクトル空間を$k$次のde Rhamコホモロジー群といいます。
このベクトル空間のランクが$M$に$k$次元の穴がどれだけあいているかを測る指標となります。
すばらしい。

とは言え、若干間接的なことをやっている印象もぬぐえませんね。
直接図形の穴の数を数える方法はないかというとそれはありまして、特異ホモロジーというものです。
これを説明しましょう。
以下では多様体というキレイ目な図形(曲線とか曲面とか滑らかで次元が一定な図形)を考えることにします。

$k$単体という言葉を用意します。
0単体とは点のこと。
1単体とは線分のこと。
2単体とは三角形のこと。
3単体とは三角形からなる四面体のこと(正四面体とか)。

あとは推して知ってください(笑)

注意していただきたいのは、2単体とか3単体は中身の詰まったものを考えてください!
各$k$単体の標準的な形のものを決めておき、これを$\varDelta _k$と書くこととしましょう。

多様体$M$の特異$k$単体とは、何回でも微分できる(=滑らかな)写像
$\sigma :\varDelta_k\rightarrow M$
のことを言います。
きちんと形を保って写ってくれていたら嬉しいですけど、つぶれたりしていても広い心で受け入れます。
$M$の特異$k$単体の整数係数の一次結合で書いたものを(形式的に考えて)$M$の特異$k$チェインと言います。
特異$k$チェイン全体を$S_k(M)$と書きます。
$M$の特異$k$単体ぜーんぶを基底とする$\mathbb{Z}$加群ということですね◎

写像の一次結合ってなんですか、という質問がありそうですが、あとで微分形式を特異チェインの上で積分します。つまり、特異チェインは積分路だと思えば納得できるかもしれません。
たとえば
\[\int_{m\sigma_1+n\sigma_2}\omega =m\int_{\sigma_1}\omega +n\int_{\sigma_2} \omega\]
ということですね◎

さて、各特異$k$単体$\sigma $は$\varDelta_k$から$M$への写像ですが、これを$\varDelta_k$の境界に制限したものを$\partial \sigma $と書きます。
0単体の境界とは空集合、
1単体の境界とは端点、
2単体の境界とは中身の詰まってない三角形、

推して知ってください(笑)

特異$k$チェインは特異$k$単体の一次結合なので、線型に拡張することによって$\partial $は$S_k(M)$から$S_{k-1}(M)$への写像になります。
また、よく観察すると境界には境界はないこと($\partial \partial =0$)もわかります。

ようやく準備ができましたが、$S_k(M)$の元のうち$\partial $で送って0になるもの全体を、$S_k(M)$の元のうち$S_{k+1}(M)$の元の境界になっているもの全体で割って商加群を作ります。
これを$M$の$k$次特異ホモロジー群と言います。
この加群のランクが$M$に$k$次元の穴がどれだけあいているかを測る指標となります。
なぜか?

…説明思いつかないw
が、$x$-$y$平面上の単位円$S^1$でやってみましょう。

$\varDelta_1$から$S^1$への特異1単体$\sigma_1$、$\sigma_2$を、それぞれ$\varDelta_1$を上半弧と下半弧に写すものとしましょう。
すると大体$\sigma_1+\sigma_2=S^1$となり、これは図形的に考えて境界はありません。
つまり、$\partial (\sigma_1+\sigma_2)=0$となります。
なお、$\sigma_1+\sigma_2\in S_1(S^1)$です。

それでは次に、$\partial \tau =\sigma_1+\sigma_2$となるような$\tau \in S_2(S^1)$はあるか?と考えると、これはありません。
なんでかというと、それは穴があいているからです(笑)
つまり、$S^1$の中がきちんと埋まっていたら、$\varDelta_2$を$S^1$の内部にべたっと写す特異2単体を$\tau $とすれば$\partial \tau =\sigma_1+\sigma_2$とできるのですが、穴があいているとそういう風にできないんです。はい。

これで直接幾何的に多様体の穴のあき方をはかる手段が得られました。

最後に1ひねりしておきます。
$S_k(M)$から$\mathbb{R}$への準同型全体を$S^k(M)$と書き、$\partial :S_{k+1}(M)\rightarrow S_k(M)$の引き戻しを$\delta :S^k(M)\rightarrow S^{k+1}(M)$と書き、$S^k(M)$の元のうち$\delta $で送って0になるもの全体を、$S^k(M)$の元のうち$S^{k-1}(M)$の元の$\delta $による像になっているもの全体で割って商群を作ります。
これを$M$の$k$次特異コホモロジー群と言います。

さて、de Rhamの定理の主張を述べますと、
「de Rhamコホモロジー群と特異コホモロジー群は同型である。」
ということになります。
微分形式という解析的なもので定義したコホモロジーと、幾何的な発想で定義したコホモロジーが等しいということです。

この同型の基になるのがStokesの定理です。
Stokesの定理とは
\[\int _{\partial \sigma }\omega =\int_{\sigma }d\omega \]
というものでした。
ここで$\sigma $は$M$の$k+1$チェイン、$\omega $は$M$の$k$次微分形式です。

この見方が私は好きなのですが、積分は
\[\int :A^k(M)\times S^k(M)\rightarrow \mathbb{R}\]
という写像だと思えます。
ここで$M$の$k$次微分形式全体を$A^k(M)$と書きました。

$\omega $を固定したとき$\int \omega $のことを$I(\omega )$と書けば、$I(\omega)\in S^k(M)$ですから、$I:A^k(M)\rightarrow S^k(M)$と考えられます。
Stokesの定理は、この写像$I$が$I\circ d=\delta \circ I$を満たすということ、定義せずに言葉を使うとde Rham複体から特異コチェイン複体へのコチェイン写像になっている、ということを主張しています。
つまり、
\[I(d\omega )(\sigma )=\int_{\sigma }d\omega =\int_{\partial \sigma }\omega=I(\omega)(\partial \sigma )=\delta(I(\omega))(\sigma )\]
ということです。
このコチェイン写像がコホモロジーに誘導する写像が実は同型だというのがde Rhamの定理なのです。

証明はまた別の機会に書きたいと思います◎

[志]志村五郎, 数学の好きな人のために, ちくま学芸文庫.
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

ring

Author:ring
大学で微分幾何学、位相幾何学を学ぶ。
修士課程修了後、就職。
会社勤めの傍ら、数学イベントやサイエンスカフェなどで、数学のおもしろさを平易に伝える活動をしています。

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