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今年のクリスマスはエキゾチック球面を作ろう(Math Advent Calender18日目)

こんにちは。そろそろ婚活しないとまずい?32歳独身リングです◎

この記事はMath Advent Calender2015の記事として書いています。
前の記事はmassa142さんの2015年センター試験数学ⅡBをPythonで解くです。

今年もこの時期がやってきました。
そう、クリスマスですね!

独り身でこの浮かれた祝日をどう過ごせばいいのか。
学生時代は補講があり、社会人になってすぐは某試験があった。
今にして思えばあれは優しさだったorz

せめて家でおいしい料理でも作れたらいいなと思ったのですが、私は料理が苦手で、家庭科で赤点をとること数知れず。
どーしたものか…と頭を抱えてコンマ数秒、いいアイデアを思いつきました☆彡

「そうだ、エキゾチック球面を作ろう!」

というわけで、今年のクリスマスはデートも料理もあきらめ、エキゾチック球面を作ることにしました(^o^)

まずは「エキゾチック球面てなに?」という素朴な疑問にお答えしましょう。
エキゾチック球面とは、通常の球面とは異なる微分構造を持つ球面のことです。
微分構造については前振り的に書いたこちらの記事をご参照。

以下にレシピを書きますので、この記事を読んでいるアナタも、もし仮に万が一私と同じ境遇でしたら、是非挑戦してみてください◎

-エキゾチック球面のレシピ[M]-

〇材料(1つ分)
・4次元球面$S^4$ 1つ (底空間用)
・3次元球面$S^3$ 無限個($2^{\aleph _0}$個) (ファイバー用)

〇手順
1.まずは、用意した4次元球面$S^4$を赤道で2つに切ります。
できた2つの半球を$D^4_+$、$D^4_-$と書くことにします。
それぞれの境界(もとの球面の赤道)は3次元球面$S^3$と同相になりますが、これはどちらにも含めておいてください。

2.ファイバー用の$S^3$を、$D^4_+$、$D^4_-$それぞれの上に綺麗に並べます。
クリスマスに親子で行うのにぴったりの作業ですね!
(賽の河原で…と書きたかったが自粛した)
2つの直積$D^4_+\times S^3$、$D^4_-\times S^3$ができるまで根気よく作業しましょう。

3.次に、できた2つの直積$D^4_+\times S^3$、$D^4_-\times S^3$を貼り合わせます。
貼り合わせるのは、$D^4_+$、$D^4_-$の境界上のファイバーどうしだけです。
しかも、同じ点の上のファイバーどうしを貼り合わせます。
なので、貼り合わせてできるファイバーバンドルの底空間はもとの4次元球面$S^4$に戻ります。

具体的な貼り合わせ方は、以下の通りです。
まず、ファイバー$S^3$の変換群として$SO(4)$をとりましょう。
$S^3$を$\mathbb{R}^4$の中に入れて考えたときに、向きを保つ回転全体ですね。

次に、$S^4$の赤道$S^3$上の各点に$SO(4)$の元を対応させる連続関数$f$をとります。
この$f$を使って、$D^4_+$、$D^4_-$の境界上のファイバーたちに
\[(x,y)\sim (x,f(x)y),\quad (x,y)\in S^3\times S^3\]
という同値関係を入れて貼り合わせてください。

ここで、正確には$(x,y)\in \partial D^4_+\times S^3$、$(x,f(x)y)\in \partial D^4_-\times S^3$で、$x$は赤道上の点、$y$はファイバー上の点ということになります。
同値関係の両辺ともに第1成分が$x$なので、赤道上の同じ点の上のファイバーどうしだけを貼り合わせることになります。

4.最後に、$f$をどう取るかについて説明しましょう。
まず、貼り合わせの結果できる図形(ファイバーバンドルの同型類)は$f$のホモトピー類にしかよりません。
つまり、ホモトピー群の元$[f]\in \pi _3(SO(4))$のみによってできあがるファイバーバンドルが決まります。

次に、実は$\pi _3(SO(4))$は$\mathbb{Z}\oplus \mathbb{Z}$と同型です。
しかもこの同型は、四元数を使って書けます。
具体的には、$S^3$の元$u,v$を長さが1の四元数だと思って、$(h,j)\in \mathbb{Z}\oplus \mathbb{Z}$に対して次の式で定まる写像$f_{h,j}$のホモトピー類が対応します。
\[f_{h,j}(u)v=u^hvu^j \]
ここで、$u$は赤道の$S^3$に、$v$はファイバーの$S^3$に入っているというイメージです。

さて、ここまで来たら完成はあと一歩!
$k$を、$k^2$を7で割った余りが1でないような奇数とします。
$h,j$を、次の方程式で定まる整数とします。
\[h+j=1,\quad h-j=k\]
上の写像$f_{h,j}$を使って3.の貼り付けを実行します。
すると出来上がったファイバーバンドルの全空間は、7次元球面と同相ですが通常の7次元球面と微分同相ではありません!


-エキゾチック球面の味わい方-

無事にエキゾチック球面は完成したでしょうか。え、できた?おめでとうございます(^^)
せっかく作ったんですから眺めているだけではもったいない、じっくり味わいたいところです◎

とは言え、3次元空間内に幾何学的実現されていないものを食べることはできないですね。
世の中には食べられるζ関数なんてものもあるようですが、食べられるエキゾチック球面というのは多分作れない。残念。

そこで、いま作った球面の微分構造が通常の微分構造とは異なることを理解して、エキゾチック球面を味わいたいと思います。
概要だけでも、有名な定理や概念がいくつも出てきて華やかです◎

まずは、球面と同相かどうかを判定するのにMorse理論(と言っていいのかよくわからない)を使います。
具体的には、その上に2つの退化しない臨界点のみをもつMorse関数が存在するような閉多様体は球面と同相であることを主張する、Reebの定理です。
上で作った図形の上にはそのような関数が構成でき、従って7次元球面と同相であることがわかります。

次に、微分同相でないことを示すのに使う不変量を作ります。
これは、3次と4次のコホモロジー群が消えているという条件を満たす向きづけられた7次元閉多様体に対して定義される量です。
特に、7次元球面と同相な多様体は明らかにこの条件を満たしています。

向きづけられた7次元閉多様体は全てある8次元多様体の境界になる、というThomのコボルディズムの結果を使って、与えられた向きづけられた7次元閉多様体$M^7$を境界として持つ8次元多様体を1つとり、その符号数とPontrjagin類とを使って$\lambda (M^7)$という数を定義します。

これは8次元多様体の取り方によらず、また7を法として定まることが、Hirzebruchの符号数定理より従います。
つまり、3次と4次のコホモロジー群が消えている向きづけられた7次元閉多様体$M^7$の$\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}$に値をとる不変量$\lambda (M^7)$が定義できます。
この値が異なる2つの多様体は微分同相ではない、ということになります。

最後に上で作った図形と通常の球面それぞれについて$\lambda (M^7)$を計算すると、それぞれ$k^2-1$,$0$となることがわかります(両方$\rm{mod}$ $7$で考えてます)。
したがって、上でとったように$k$を$k^2$が7で割って1余らないようにとってておけば、できた図形は、通常の7次元球面と同相だけど微分同相ではない、という結論になります。

いかがでしょうか。
エキゾチック球面、夢がありますよね!
さすがにブログで細かいことは書けないし、実は私もきちんと理解できていませんw
オリジナルの論文へのリンクを貼っておきますので、興味を持たれた方は是非読んでみてください!
この論文が発表されたときは各方面にかなりの衝撃を与えたようです。
ページ数が7ページというのは、たまたまかな。

それでは、みなさんよいクリスマスを◎

-参考文献-
[M]J. W. Milnor, On manifolds homeomorphic to the 7-sphere, Ann, ofMath., 64(2); 399-405.
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

ring

Author:ring
大学で微分幾何学、位相幾何学を学ぶ。
修士課程修了後、就職。
会社勤めの傍ら、数学イベントやサイエンスカフェなどで、数学のおもしろさを平易に伝える活動をしています。

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