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今年のクリスマスはエキゾチック球面を作ろう(Math Advent Calender18日目)

こんにちは。そろそろ婚活しないとまずい?32歳独身リングです◎

この記事はMath Advent Calender2015の記事として書いています。
前の記事はmassa142さんの2015年センター試験数学ⅡBをPythonで解くです。

今年もこの時期がやってきました。
そう、クリスマスですね!

独り身でこの浮かれた祝日をどう過ごせばいいのか。
学生時代は補講があり、社会人になってすぐは某試験があった。
今にして思えばあれは優しさだったorz

せめて家でおいしい料理でも作れたらいいなと思ったのですが、私は料理が苦手で、家庭科で赤点をとること数知れず。
どーしたものか…と頭を抱えてコンマ数秒、いいアイデアを思いつきました☆彡

「そうだ、エキゾチック球面を作ろう!」

というわけで、今年のクリスマスはデートも料理もあきらめ、エキゾチック球面を作ることにしました(^o^)

まずは「エキゾチック球面てなに?」という素朴な疑問にお答えしましょう。
エキゾチック球面とは、通常の球面とは異なる微分構造を持つ球面のことです。
微分構造については前振り的に書いたこちらの記事をご参照。

以下にレシピを書きますので、この記事を読んでいるアナタも、もし仮に万が一私と同じ境遇でしたら、是非挑戦してみてください◎

-エキゾチック球面のレシピ[M]-

〇材料(1つ分)
・4次元球面$S^4$ 1つ (底空間用)
・3次元球面$S^3$ 無限個($2^{\aleph _0}$個) (ファイバー用)

〇手順
1.まずは、用意した4次元球面$S^4$を赤道で2つに切ります。
できた2つの半球を$D^4_+$、$D^4_-$と書くことにします。
それぞれの境界(もとの球面の赤道)は3次元球面$S^3$と同相になりますが、これはどちらにも含めておいてください。

2.ファイバー用の$S^3$を、$D^4_+$、$D^4_-$それぞれの上に綺麗に並べます。
クリスマスに親子で行うのにぴったりの作業ですね!
(賽の河原で…と書きたかったが自粛した)
2つの直積$D^4_+\times S^3$、$D^4_-\times S^3$ができるまで根気よく作業しましょう。

3.次に、できた2つの直積$D^4_+\times S^3$、$D^4_-\times S^3$を貼り合わせます。
貼り合わせるのは、$D^4_+$、$D^4_-$の境界上のファイバーどうしだけです。
しかも、同じ点の上のファイバーどうしを貼り合わせます。
なので、貼り合わせてできるファイバーバンドルの底空間はもとの4次元球面$S^4$に戻ります。

具体的な貼り合わせ方は、以下の通りです。
まず、ファイバー$S^3$の変換群として$SO(4)$をとりましょう。
$S^3$を$\mathbb{R}^4$の中に入れて考えたときに、向きを保つ回転全体ですね。

次に、$S^4$の赤道$S^3$上の各点に$SO(4)$の元を対応させる連続関数$f$をとります。
この$f$を使って、$D^4_+$、$D^4_-$の境界上のファイバーたちに
\[(x,y)\sim (x,f(x)y),\quad (x,y)\in S^3\times S^3\]
という同値関係を入れて貼り合わせてください。

ここで、正確には$(x,y)\in \partial D^4_+\times S^3$、$(x,f(x)y)\in \partial D^4_-\times S^3$で、$x$は赤道上の点、$y$はファイバー上の点ということになります。
同値関係の両辺ともに第1成分が$x$なので、赤道上の同じ点の上のファイバーどうしだけを貼り合わせることになります。

4.最後に、$f$をどう取るかについて説明しましょう。
まず、貼り合わせの結果できる図形(ファイバーバンドルの同型類)は$f$のホモトピー類にしかよりません。
つまり、ホモトピー群の元$[f]\in \pi _3(SO(4))$のみによってできあがるファイバーバンドルが決まります。

次に、実は$\pi _3(SO(4))$は$\mathbb{Z}\oplus \mathbb{Z}$と同型です。
しかもこの同型は、四元数を使って書けます。
具体的には、$S^3$の元$u,v$を長さが1の四元数だと思って、$(h,j)\in \mathbb{Z}\oplus \mathbb{Z}$に対して次の式で定まる写像$f_{h,j}$のホモトピー類が対応します。
\[f_{h,j}(u)v=u^hvu^j \]
ここで、$u$は赤道の$S^3$に、$v$はファイバーの$S^3$に入っているというイメージです。

さて、ここまで来たら完成はあと一歩!
$k$を、$k^2$を7で割った余りが1でないような奇数とします。
$h,j$を、次の方程式で定まる整数とします。
\[h+j=1,\quad h-j=k\]
上の写像$f_{h,j}$を使って3.の貼り付けを実行します。
すると出来上がったファイバーバンドルの全空間は、7次元球面と同相ですが通常の7次元球面と微分同相ではありません!


-エキゾチック球面の味わい方-

無事にエキゾチック球面は完成したでしょうか。え、できた?おめでとうございます(^^)
せっかく作ったんですから眺めているだけではもったいない、じっくり味わいたいところです◎

とは言え、3次元空間内に幾何学的実現されていないものを食べることはできないですね。
世の中には食べられるζ関数なんてものもあるようですが、食べられるエキゾチック球面というのは多分作れない。残念。

そこで、いま作った球面の微分構造が通常の微分構造とは異なることを理解して、エキゾチック球面を味わいたいと思います。
概要だけでも、有名な定理や概念がいくつも出てきて華やかです◎

まずは、球面と同相かどうかを判定するのにMorse理論(と言っていいのかよくわからない)を使います。
具体的には、その上に2つの退化しない臨界点のみをもつMorse関数が存在するような閉多様体は球面と同相であることを主張する、Reebの定理です。
上で作った図形の上にはそのような関数が構成でき、従って7次元球面と同相であることがわかります。

次に、微分同相でないことを示すのに使う不変量を作ります。
これは、3次と4次のコホモロジー群が消えているという条件を満たす向きづけられた7次元閉多様体に対して定義される量です。
特に、7次元球面と同相な多様体は明らかにこの条件を満たしています。

向きづけられた7次元閉多様体は全てある8次元多様体の境界になる、というThomのコボルディズムの結果を使って、与えられた向きづけられた7次元閉多様体$M^7$を境界として持つ8次元多様体を1つとり、その符号数とPontrjagin類とを使って$\lambda (M^7)$という数を定義します。

これは8次元多様体の取り方によらず、また7を法として定まることが、Hirzebruchの符号数定理より従います。
つまり、3次と4次のコホモロジー群が消えている向きづけられた7次元閉多様体$M^7$の$\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}$に値をとる不変量$\lambda (M^7)$が定義できます。
この値が異なる2つの多様体は微分同相ではない、ということになります。

最後に上で作った図形と通常の球面それぞれについて$\lambda (M^7)$を計算すると、それぞれ$k^2-1$,$0$となることがわかります(両方$\rm{mod}$ $7$で考えてます)。
したがって、上でとったように$k$を$k^2$が7で割って1余らないようにとってておけば、できた図形は、通常の7次元球面と同相だけど微分同相ではない、という結論になります。

いかがでしょうか。
エキゾチック球面、夢がありますよね!
さすがにブログで細かいことは書けないし、実は私もきちんと理解できていませんw
オリジナルの論文へのリンクを貼っておきますので、興味を持たれた方は是非読んでみてください!
この論文が発表されたときは各方面にかなりの衝撃を与えたようです。
ページ数が7ページというのは、たまたまかな。

それでは、みなさんよいクリスマスを◎

-参考文献-
[M]J. W. Milnor, On manifolds homeomorphic to the 7-sphere, Ann, ofMath., 64(2); 399-405.
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

今年の日曜数学活動

この記事は 日曜数学 Advent Calendar 2015 の14日目の記事です。(13日目:模様の分類の話 | みずすまし@nosiika )

こんにちは。リングです◎
アドベントカレンダーの予告では整数について書くかもとコメントしましたが、予定変更ですw

早いもので今年も終わろうとしています。
思えばこの1年は私の日曜数学にとって非常に実り多い年でありました。

まずは3月に第6回関西すうがく徒のつどいで非ユークリッド幾何学について講演させていただきました。

双曲平面のモデルと初等幾何 from matsumoring


内容を詰め込みすぎて、2章はまるごと飛ばしましたがwww
ちなみに、3月14日の円周率の日でしたね◎

5月には東京に進出して、第3回プログラマのための数学勉強会でGauss-Bonnetの定理について発表させていただきました。

20150522_つながり方・まがり方・大きさ from matsumoring


何度か話をして慣れているネタを持って行ったので、大過なく発表できて安心しました。
参加者を当てていって質問に答えてもらうスタイルはなかなかよかったのではないかと思っています◎

その後第1回、第2回日曜数学会にも参加して、東京の日曜数学者たちとの交流を深めることができました。
名前だけは知っていたのですが…という方に何人もお会いできて嬉しかったです。

9月には第7回関西すうがく徒のつどいで楕円関数について講演させていただきました。
やはり内容を詰め込みすぎたようで、「計算が早すぎて追えなかった」などの声が多かったですが、全体的な話の流れは面白かったという感想もいただき、大変嬉しかったです。

20150922_楕円関数とおもしろい応用 from matsumoring


そして11月にはサイエンスアゴラの日曜数学100連発という企画にて、これまでの日曜数学活動について発表させていただきました。

20151114_私の日曜数学 from matsumoring


これまでの自分の活動を振り返るよい機会となりました。
大きな会場で話をさせていただき嬉しかったです!

来年も日曜数学に励んでいきたいと思います。よろしくお願い致します◎
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

可微分構造 #とは

これはMath Advent Calender 2015の記事です。

前回の記事で滑らかな図形を「多様体」という言葉で表しましたが、正確には「可微分多様体」というべきでした。
図形の滑らかさを定めるのは「可微分構造」と呼ばれるものですが、なかなか難しい概念だと思います。
可微分構造とは、一言で言ってしまえば、図形の各点で座標を与えることです。

まず具体例を書きます。
きちんとした定義は最後に書きます。

$x$-$y$平面で方程式$y=x^3$により定まる曲線$M$を考えましょう。
この曲線は滑らかでしょうか。
直観的には滑らかと言っていいような気もします。

では可微分構造を与えてみましょう。
まず、1つ目の可微分構造は、写像$\varphi _1:M\rightarrow \mathbb{R}$を
\[\varphi _1(x,y)=x\]
で定め、これで与えることにします。
$M$の全ての点は$\varphi _1$により座標が振られました。

次に、2つ目の可微分構造は、写像$\varphi _2:M\rightarrow \mathbb{R}$を
\[\varphi _2(x,y)=y=x^3\]
で定め、これで与えることにします。
やはり、$M$の全ての点は$\varphi _2$により座標が振られました。

最後に、3つ目の可微分構造は、写像$\varphi _3:M\rightarrow \mathbb{R}$を
\[\varphi _3(x,y)=x+1\]
で定め、これで与えることにします。
もちろん、$M$の全ての点は$\varphi _3$により座標が振られます。

それで?という声が聞こえてきそうですね(笑)

さて可微分多様体とは図形と座標の組のことを言いますので、$(M,\varphi _1)$,$(M,\varphi _2)$,$(M,\varphi _3)$は全て違う可微分多様体ということになります。
そんな区別する必要あるの?という声が…(笑)

実際、$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _3)$はあまり区別する必要がなくて、同値な可微分多様体である、ということになります。
これはどういうことかと言うと、$\varphi _3\circ \varphi _1^{-1}:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}$-これは$x$に$x+1$を対応させる写像です-が微分同相(自分自身も逆写像も何回でも微分できる)になっているということです。
実際、$\varphi _3\circ \varphi _1^{-1}$が何回でも微分できるのは明らかだし、逆写像の$x\mapsto x-1$も何回でも微分できますからね◎

ところがどっこい、$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _2)$は上の意味で同値ではありません。
なぜなら、$\varphi _2\circ \varphi _1^{-1}$は$x\mapsto x^3$で与えられ、これ自身は何回でも微分できますが、逆写像の$x\mapsto \sqrt[3]{x}$は$x=0$で微分できず、微分同相になっていないためです(同相ではあるんですが)。

それでは$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _2)$は全然違う可微分多様体なのかというとそうではなくて、同値ではないのですが、「可微分多様体として微分同相」になっています(さっきまで出てきた微分同相は、ユークリッド空間の微分同相)。
どういうことかと言いますと、写像$f:M\rightarrow M$を
\[f(x,y)=(\sqrt[3]{x},\sqrt[3]{y})=(\sqrt[3]{x},x)\]
と定めます。
これを間に入れて$\varphi _2\circ f\circ \varphi _1^{-1}$という写像を考えるとこれは恒等写像$x\mapsto x$になっていて明らかに微分同相です。
つまり、$(M,\varphi _1)$と$(M,\varphi _2)$も同じような多様体ということになり、結局$(M,\varphi _1)$,$(M,\varphi _2)$,$(M,\varphi _3)$は全て同じような可微分構造を持つということになりました(^o^)

では、同じ図形の上に微分同相でもないような可微分構造はあるんでしょうか?
それは高次元にはあって面白いのですが大人の事情で割愛します…
とりあえずの結論としては、可微分多様体が本質的に違うかどうかは、微分同相類で判断しましょう!ということですね◎

さて、終わりに、可微分多様体に関する定義を書いておきます。
流儀によって色々言葉や前提が違うかもしれませんが、ご容赦ください。

まずは、基礎となる位相空間に条件を要請します。

第二可算公理を満たすHausdorff空間$M$が$n$次元位相多様体であるとは、$M$の各点$p$が$\mathbb{R}^n$の開集合と同相な開近傍を持つことを言う。
$M$の開集合$U$と$U$から$\mathbb{R}^n$の中への同相写像の組$(U,\varphi)$を座標近傍という。

第二可算公理を満たすHausdorff空間、というのはおまじないで、残りの部分が大事です。
次元が定義できるような図形になっています。

次に、可微分構造を定義します。

$n$次元位相多様体$M$の座標近傍の族$S=\{(U_{\alpha },\varphi _{\alpha })\}_{\alpha \in A}$が$M=\cup _{\alpha \in A}U_{\alpha }$を満たし、任意の$\alpha ,\beta \in A$に対して$\varphi _{\beta }\circ \varphi _{\alpha }^{-1}$が微分同相であるとき、$S$を可微分座標近傍系と言う。
$n$次元位相多様体$M$と可微分座標近傍系$S$の組$(M,S)$を可微分多様体と言い、可微分座標近傍系$S$は位相多様体$M$に可微分構造を定めると言う。

要するに、座標で図形全体を覆って、座標変換が全て滑らかなものを可微分構造と言う、ということです。

次に、可微分多様体の同値を定義します。

可微分多様体$(M,S)$の座標近傍$(U',\varphi ' )$が可微分座標近傍であるとは、$S\cup \{(U',\varphi ' )\}$も位相多様体$M$の可微分座標近傍系となることを言う。
可微分多様体$(M,S)$の可微分座標近傍全ての和集合$\tilde{S}$を$(M,S)$の極大可微分座標近傍系と言う。
可微分多様体$(M,S)$,$(M,S')$に対し$\tilde{S}$=$\tilde{S'}$が成り立つとき、$(M,S)$と$(M,S')$は同値であると言う。

座標で図形を覆えば可微分構造になるんですが、座標による図形の覆い方は無数にあります(例えば余分なものをどんどん付け加えればよい)。
そこで、座標変換が滑らかなものを全部付け加えてこれ以上余分なものの付け加えようがないものを作るわけです。
極大可微分座標近傍系が、位相多様体$M$上の可微分構造の同値類の完全代表系としてとれます。
極大〇〇と聞くと、「Zornの補題が~」と言われないかビクビクしてしまうのを何とかしたいです(笑)

さて、最後に微分同相を定義します。

可微分多様体$(M,S)$,$(N,T)$の間の写像$f:M\rightarrow N$が微分同相写像であるとは、位相空間として同相写像であり、任意の$(U,\varphi )\in S$,$(V,\psi )\in T$に対し、$\psi \circ f \circ \varphi ^{-1}$が微分同相であることを言う。

同値ならば恒等写像が微分同相なので、可微分多様体の同値類の集合(これは基礎となる位相多様体が同じ可微分多様体どうしの同値関係)をさらに微分同相類(これは基礎となる位相多様体が異なる可微分多様体間にも入る同値関係)にわけることができて、これが本質的に異なる可微分構造の階層だ、と言っていいのではないかと思います◎
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

Stokesの定理をやったら次はde Rhamの定理でしょ

これはMath Advent Calender 2015の記事です。

de Rhamの定理という、私の好きな幾何の定理についてとてもアバウトに書きます。
微積分のStokesの定理をやったら、ここまで勉強しないと絶対もったいないと思います。

志村五郎先生は著書[志]の中で
「de Rhamの理論(中略)は幾何学において基本的であって、その教育上の、あるいは学習上の、重要性はGauss-Bonnetの定理をはるかに上回る」
「Gauss-Bonnet(中略)の公式は忘れてもかまわないが、de Rhamの定理は忘れてはならないのである」
とおっしゃっています。

さてde Rhamの理論とは、図形の上の微分形式からその図形の穴のあき方がわかるというものです。
微分形式?穴のあき方?

具体的にざっくり説明しましょう。
$x$-$y$平面上の単位円$S^1$を考えます。
$x$軸の正の部分から反時計回りに角度を測って座標$\theta $がとれます。
きちんと書くと、単位円から$(1,0)$を除いた図形の上の関数$\theta :S^1\setminus \{(1,0)\}\rightarrow (0,2\pi )$が定まります。

図形の上の関数のことを「0次微分形式」と言います。
ただし、この$\theta $は$(1,0)$でうまくつながらず$S^1$全体で定義されていないので、残念ながら0次微分形式にはなっていません。

ところがこの関数を「微分」することはできて、1次微分形式$d\theta $というものができます。
これは$S^1$全体で定義されるのです。
この微分を外微分と呼びます。

ちなみに、一般に$k$次微分形式を外微分すると$(k+1)$次微分形式ができます。
そこで$d\theta $をもう1回外微分して2次微分形式を作ろうとするとこれは0になってしまいます。
なぜなら、外微分は2回連続してやると0になるという仕組みになっているからです($dd=0$)。

以上で$d\theta $の満たす性質がある程度わかりました。
〇1次微分形式$d\theta $は、0次微分形式の外微分として書くことはできない。
〇1次微分形式$d\theta $は、外微分すると0になる。
さらに、上の性質を満たす1次微分形式は本質的には$d\theta $しかないということもわかります。

これが、単位円$S^1$には1次元の穴が1つあいているということを示しているのです。
なぜか?

まず、穴のあいていない図形の上の1次微分形式は必ず0次微分形式の外微分として書けることを主張する、Poincaréの補題というものがあるからです。
これは簡単な微分方程式の問題でして、0次微分形式の外微分が与えられた1次微分形式になる($df=\omega $)という微分方程式の可積分条件が、与えられた1次微分形式の外微分が0になる($d\omega =0$)ということだということです。

ということは、外微分しても0になるにもかかわらず0次微分形式の外微分として表せない1次微分形式があるような図形には穴があいている、ということになります(対偶ですね◎)。
そして、そのような1次微分形式が本質的に1つだけということが、穴が1つあいているということに対応します。
なお、「1次元の穴」と書いたのは議論を0次微分形式と1次微分形式で行ったからです。
同様のことを$(k-1)$次微分形式と$k$次微分形式でやれば、$k$次元の穴の数がわかるということです。

$k$次微分形式の元のうち外微分して0になるもの全体を、$k$次微分形式の元のうち$(k-1)$次微分形式の外微分として表せるもの全体で割ってできる商ベクトル空間を$k$次のde Rhamコホモロジー群といいます。
このベクトル空間のランクが$M$に$k$次元の穴がどれだけあいているかを測る指標となります。
すばらしい。

とは言え、若干間接的なことをやっている印象もぬぐえませんね。
直接図形の穴の数を数える方法はないかというとそれはありまして、特異ホモロジーというものです。
これを説明しましょう。
以下では多様体というキレイ目な図形(曲線とか曲面とか滑らかで次元が一定な図形)を考えることにします。

$k$単体という言葉を用意します。
0単体とは点のこと。
1単体とは線分のこと。
2単体とは三角形のこと。
3単体とは三角形からなる四面体のこと(正四面体とか)。

あとは推して知ってください(笑)

注意していただきたいのは、2単体とか3単体は中身の詰まったものを考えてください!
各$k$単体の標準的な形のものを決めておき、これを$\varDelta _k$と書くこととしましょう。

多様体$M$の特異$k$単体とは、何回でも微分できる(=滑らかな)写像
$\sigma :\varDelta_k\rightarrow M$
のことを言います。
きちんと形を保って写ってくれていたら嬉しいですけど、つぶれたりしていても広い心で受け入れます。
$M$の特異$k$単体の整数係数の一次結合で書いたものを(形式的に考えて)$M$の特異$k$チェインと言います。
特異$k$チェイン全体を$S_k(M)$と書きます。
$M$の特異$k$単体ぜーんぶを基底とする$\mathbb{Z}$加群ということですね◎

写像の一次結合ってなんですか、という質問がありそうですが、あとで微分形式を特異チェインの上で積分します。つまり、特異チェインは積分路だと思えば納得できるかもしれません。
たとえば
\[\int_{m\sigma_1+n\sigma_2}\omega =m\int_{\sigma_1}\omega +n\int_{\sigma_2} \omega\]
ということですね◎

さて、各特異$k$単体$\sigma $は$\varDelta_k$から$M$への写像ですが、これを$\varDelta_k$の境界に制限したものを$\partial \sigma $と書きます。
0単体の境界とは空集合、
1単体の境界とは端点、
2単体の境界とは中身の詰まってない三角形、

推して知ってください(笑)

特異$k$チェインは特異$k$単体の一次結合なので、線型に拡張することによって$\partial $は$S_k(M)$から$S_{k-1}(M)$への写像になります。
また、よく観察すると境界には境界はないこと($\partial \partial =0$)もわかります。

ようやく準備ができましたが、$S_k(M)$の元のうち$\partial $で送って0になるもの全体を、$S_k(M)$の元のうち$S_{k+1}(M)$の元の境界になっているもの全体で割って商加群を作ります。
これを$M$の$k$次特異ホモロジー群と言います。
この加群のランクが$M$に$k$次元の穴がどれだけあいているかを測る指標となります。
なぜか?

…説明思いつかないw
が、$x$-$y$平面上の単位円$S^1$でやってみましょう。

$\varDelta_1$から$S^1$への特異1単体$\sigma_1$、$\sigma_2$を、それぞれ$\varDelta_1$を上半弧と下半弧に写すものとしましょう。
すると大体$\sigma_1+\sigma_2=S^1$となり、これは図形的に考えて境界はありません。
つまり、$\partial (\sigma_1+\sigma_2)=0$となります。
なお、$\sigma_1+\sigma_2\in S_1(S^1)$です。

それでは次に、$\partial \tau =\sigma_1+\sigma_2$となるような$\tau \in S_2(S^1)$はあるか?と考えると、これはありません。
なんでかというと、それは穴があいているからです(笑)
つまり、$S^1$の中がきちんと埋まっていたら、$\varDelta_2$を$S^1$の内部にべたっと写す特異2単体を$\tau $とすれば$\partial \tau =\sigma_1+\sigma_2$とできるのですが、穴があいているとそういう風にできないんです。はい。

これで直接幾何的に多様体の穴のあき方をはかる手段が得られました。

最後に1ひねりしておきます。
$S_k(M)$から$\mathbb{R}$への準同型全体を$S^k(M)$と書き、$\partial :S_{k+1}(M)\rightarrow S_k(M)$の引き戻しを$\delta :S^k(M)\rightarrow S^{k+1}(M)$と書き、$S^k(M)$の元のうち$\delta $で送って0になるもの全体を、$S^k(M)$の元のうち$S^{k-1}(M)$の元の$\delta $による像になっているもの全体で割って商群を作ります。
これを$M$の$k$次特異コホモロジー群と言います。

さて、de Rhamの定理の主張を述べますと、
「de Rhamコホモロジー群と特異コホモロジー群は同型である。」
ということになります。
微分形式という解析的なもので定義したコホモロジーと、幾何的な発想で定義したコホモロジーが等しいということです。

この同型の基になるのがStokesの定理です。
Stokesの定理とは
\[\int _{\partial \sigma }\omega =\int_{\sigma }d\omega \]
というものでした。
ここで$\sigma $は$M$の$k+1$チェイン、$\omega $は$M$の$k$次微分形式です。

この見方が私は好きなのですが、積分は
\[\int :A^k(M)\times S^k(M)\rightarrow \mathbb{R}\]
という写像だと思えます。
ここで$M$の$k$次微分形式全体を$A^k(M)$と書きました。

$\omega $を固定したとき$\int \omega $のことを$I(\omega )$と書けば、$I(\omega)\in S^k(M)$ですから、$I:A^k(M)\rightarrow S^k(M)$と考えられます。
Stokesの定理は、この写像$I$が$I\circ d=\delta \circ I$を満たすということ、定義せずに言葉を使うとde Rham複体から特異コチェイン複体へのコチェイン写像になっている、ということを主張しています。
つまり、
\[I(d\omega )(\sigma )=\int_{\sigma }d\omega =\int_{\partial \sigma }\omega=I(\omega)(\partial \sigma )=\delta(I(\omega))(\sigma )\]
ということです。
このコチェイン写像がコホモロジーに誘導する写像が実は同型だというのがde Rhamの定理なのです。

証明はまた別の機会に書きたいと思います◎

[志]志村五郎, 数学の好きな人のために, ちくま学芸文庫.
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

近大数学コンテストでの解答の経緯

ご無沙汰しております。ringです。
1年振りの更新となってしまいましたw

今日は近畿大学の数学コンテストに参加してきました。
http://www.math.kindai.ac.jp/index.php?id=8

昨年も参加したのですが、残念ながら1問も解けませんでした。
今年は5時間かけてちょうど1問解くことができました。
その1問の解答を発見した瞬間がとても嬉しかったので、その経緯を書いてみたいと思います。

私が解答した問題は次のものです。
\[\sum_{k=0}^{\left[\frac{n}{2}\right]}\frac{(-1)^k{}_{n-k}\mathrm{C}_k}{n-k}を求めよ。\]

私の解答は次の通りです。

\[F(x):=\sum_{l=1}^{\infty}\frac{\left\{x(1-x)\right\}^l}{l}\]
のベキ級数展開の$x^n$の係数が求める値である。
(二項展開すればわかる。)

$\log{(1-x)}$のベキ級数展開
\[-\log{(1-x)}=x+\frac{x^2}{2}+\cdots =\sum_{l=1}^{\infty}\frac{x^l}{l}\]
において$x$を$x(1-x)$で置き換えれば
\[F(x)=1-\log{(x^2-x+1)}\]
がわかる。

これを$n$回微分すると、$\omega =e^{\frac{\pi}{3}i}$とおいて
\[F^{(n)}(x)=(-1)^n(n-1)!\left(\frac{1}{x-\omega }+\frac{1}{x-\omega ^{-1}}\right)\]
となる。

したがって求める値は
\[\frac{F^{(n)}(0)}{n!}=\frac{\omega ^n+\omega ^{-n}}{n}=\frac{2}{n}\cos \frac{n\pi}{3}\]
となる。

何と過去問でほとんど同じ問題が出たことがあるらしく、知っている人は一瞬で解けたのかもしれませんが、私はこの解法に思い至り解答を作成するまでにぴったり5時間かかりました。
その経緯が面白かったので以下に記します。

まず、10時にコンテストが始まりました。
私は友人と2人のグループでエントリーしていたので、最初の15分はどの問題を解くかなどの打合せに使いました。

打合せの結果、上の問題と他の問題の2問を頑張ろうということになり、10時15分から10時45分までは各自で考えることとしました。
この30分はほとんど他の問題を考えており、上の問題は$n$が1から5までのときに具体的な数値を計算する程度にとどまりました。

再び15分ほど打合せをして、11時から11時45分までは引き続き各自考えることとなりました。
11時30分くらいまでは他の問題を考えていたのですが、どうにもわからないので、上の問題を再び$n$が10のときまで具体的な数値を計算しました。

このあたりで答えの雰囲気はつかめてきました。
分母が$n$で、分子は1か2、符号がたまに入れ替わる、という感じです。
しかし、どう証明したらいいかは全くわかりません。
数学的帰納法に頼ることになるのだろうと思っていました。

打ち合わせをしましたが、2人とも進捗はありません。
お昼ご飯を食べることとしました。
私は持参した助六寿司をほおばりながら、上の問題で$n$が12の場合まで具体的に計算しました。
このあたりで、分子の挙動がどうやら周期3とか6とかそのような感じで変化しているということに気付きました。
しかし、なんで6という数字が出てくるのかはさっぱりわかりません。

12時30分頃だと思いますが、友人が別の問題を解くと言い出し、私と彼は別々の問題を解くことになりました。
同時に、私は他の問題はあきらめて上の問題一本に絞ることにしました。

そろそろ具体的な計算はやめにして、一般の式を計算しにかかったのですが、どう変形したらいいのか全くわからず途方にくれました。
具体的な計算を観察しても、一般の場合には全く役に立ちません。
帰納法を使いたかったのですが、漸化式のようなものも全く思いつきません。

というわけで、13時くらいだと思いますが、とりあえずもっと簡単な問題を考えることにしました。
具体的には、
\[\sum_{k=0}^{\left[\frac{n}{2}\right]}(-1)^k{}_{n-k}\mathrm{C}_k\]
を計算してみようと思いました。
さきほどまでと同様に$n$が10くらいのときまで愚直に計算してみると、全て0か1か-1になるようです。

ここで、突如積分を使うというアイデアがひらめきました。
今やっている分母がない場合から分母の$n-k$を作るには$x^{n-k-1}$を積分すればいいいと思ったのです。
そこからさらに、二項係数の左側が動く和を計算するときには$\frac{1}{1-x}$を何回も微分すればいいということを思い出しました。
後者は、昔アクチュアリー試験でよく使ったテクニックです。

しかし、どちらのアイデアもそのままでは使えませんでした。
多少のアレンジもしてみましたが、うまくいきません。
解析を使うというアイデアに身を任せてよいのかもわからず、しばらくはさっき考えていた状況よりもさらに簡単な
\[\sum_{k=0}^{\left[\frac{n}{2}\right]}{}_{n-k}\mathrm{C}_k\]
を$n$が小さい場合に計算したり、二項係数の式変形を試みたりしていました。
ここで13時30分くらいだったと思います。

そろそろ時間がないので、式の変形や帰納法で頑張るのか、解析を使って頑張るのか、方針を決めないといけません。
むやみに式変形するのも嫌だった(そして体力もなかった)ので、解析を使って計画的に進めることに決めました。
私が知っていた公式は使えないので、この問題に合わせて何か母関数を考えないといけないな…と思いながら、基本に立ち返りPascalの三角形を書いてあれこれ試しているうちに、ようやく正しい級数$F(x)$に辿り着きました。
(最初から素直にPascalの三角形を書いていたら速かったのかもしれませんね。)

あとはこれを$\log $のベキ級数展開にうまく合わせれば閉じた式が求まるはずです。
計算を進めると2次式の部分分数分解が出てきて、その根が1の原始6乗根になっている。
最初の観察の結果に納得がいき、ここで正解を確信しました。
これが14時15分。

検算したり解答をまとめているうちにあっという間に15時となり、コンテスト終了となりました。
答案用紙に最初考えていた他の問題の番号を書いてしまうという痛恨のミスをしましたが、5時間かけてきちんと解答を発見できた、それも単に思いついただけではなく観察から始まり途中の閃きを基に計画的に解答に辿り着けた、というのはとても嬉しかったです◎
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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

ring

Author:ring
大学で微分幾何学、位相幾何学を学ぶ。
修士課程修了後、就職。
会社勤めの傍ら、数学イベントやサイエンスカフェなどで、数学のおもしろさを平易に伝える活動をしています。

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